うどん小話 番外編 その十六 やぶ椿
なんと一年の過ぎるのが早いことか・・・・。若い時にはさほど思わなかった年月の経つ早さ。今年も年末年始の慌ただしさがアット言う間に終わってしまいました。全て手打でうどんを製造しますから、この繁忙期には還暦を過ぎた私にはチョットこたえます。まぁ~、あとしばらくは息子達の手伝いをしてあげようかと思い頑張っています。
今日はうどん店が定休日なので、鳥小屋と庭の掃除に行きました。今年の干支が"酉年"なので特に鶏を大事にしなければと、寒風のなかブルブル震えながらの掃除です。ふっと庭に目をやりますと、ほとんどの木々は一枚の葉も無く寒々しい限りです。そのなかで、一本だけ青々とした葉で紅色の小さく可憐な花を付けた”やぶ椿"が、冬景色のなかに凛として立っているのです。寒さを忘れ、しばし"やぶ椿"に見入っていました。
歳をとってきますと、何でもない風景が妙に気になるものです。古来よりこの花木は桜や梅などと違い、なぜか歌に詠まれることが少なかったのです。"花"がポトリと落ちることから「縁起が悪い」とされているからでしょうか。一方で強靭な枝は破邪の力を持つとされ、その葉は常緑性から長寿の象徴でもありました。弘法大師が椿錫杖(しゃくじょう)で井戸を掘ったという伝説は有名です。実際に僧侶の杖として使われていると言われています。
庭の"やぶ椿"がもっと大きくなり、枝が杖になるようになれば、私もこの杖に鈴を付け、チリ~ン、チリ~ンと四国八十八ヶ所参りです。もっとも私を知る人は信じないでしょうが・・・・。
それができることを楽しみにして、椿の枝のように強靭な「腰のあるうどん」を息子ともども作ってまいります。
今年も宜しくお願い致します。