うどん小話 番外編 その二十六 だるまさんと空手道場
うどん屋を開業して三十五回目の正月を迎えました。昔ほど仕事に追われることもなく年末年始を過ごすことができました。これも息子夫婦達が、うどん屋を継いでくれたおかげだと感謝しています。この感謝の気持を何らかの形で返そうと考えた末、孫たちに空手の道場を作ってやることにしました。
昨年の11月30日に自宅の倉庫を整理し、トラック1台を別の倉庫に移動させ、空手競技用のマットを敷いてみました。マット1枚の広さは1㎡で、それを24枚購入し組み合わせたのです。これで24㎡の道場が出来たことになります。倉庫の中は町内の祭りの道具がほとんどで、一年間で出し入れするのは秋祭りの前後10日間位です。後はマットを敷きっぱなしでいゝわけです。
次に、形練習には鏡がいります。これは以前に購入していたのを道場へ移しました。練習用の道具類も同時に移動です。次は時計です。これは絶対に必要なので、子供達の集中力を計る大切な道具となります。息子の嫁さんがスーパーで買ってきました。
あとは道場の「看板」となったのですが、こゝで問題発生。まったくプライベートなマイ道場なので大きな看板は恥ずかしいし、孫達に自覚を持たす為には必要だし・・・・。そこで考えたのがカマボコの板です。うどん屋の道場ですからカマボコの板が良いだろうと息子と同じ意見になり、製作にかかったのですが、思いのほか難儀。1枚では小さすぎるし、2枚にすると木目が合わず、そのうえ墨で書きますと雨水で消えてしまいます。色々試作品を作ってみたのですが、どれも品がありません。もっともカマボコの板ですから・・・・。
最後はやっぱり本職の看板屋さんにお願いして、プラスチック製の看板(横10cm、縦60cm)を作ることにしました。真白い地に真黒な字で「剛柔流空手道 源内道場」と書き入れました。
1月11日が大安吉日であり、新しいものを作るには最適とカレンダーに書かれていましたので、当日に倉庫の左側に貼り付けました。
こゝでこのページの本題に入るわけです。なぜ看板を「左」に掛けたのか。
日本の国は、古来より右より左を重んじる思想があります。「左=直=ひたり」・「右=曲=みぎり」というわけです。この考えをわかりやすく解説しますと「直」は縦糸、「曲」は横糸だと思ってください。縦糸を先にピーンと張って、そこに横糸が綾って一つの織物が出来上がります。
選挙の出陣式の時、だるまさんの目に墨を入れるのも左目なのです。時々テレビなどで右目に先墨を入れる選挙事務所がありますが、そんな人はきっと落選する候補者です。だるまさんの左目は一つの目標を計画し願い事をする意味があるのです。そして艱難辛苦の末、願い事が叶うと右の目に墨を入れます。もっと簡単に言いますと、左目には「意志」、右目には「行動」の意味があるのです。
少し話が長くなりましたが、道場の看板を左に掛けるか、右に掛けるか単純なようで単純でない話を孫達の空手道場と一枚の織物、そしてだるまさんの目を絡めながら書いてみました。
今年は戌年です。「犬々賀久楽」・「喧々諤々」議論しながら賢い犬のように楽しい年にしましょう。