うどん小話 その百九 うどん屋
うどん屋が、うどん屋の話をするのも変な話ですが、しばらくうどんの話がなかったので、今日はうどんの話をいたします。私が小学校~中学校の頃(40数年前)の話です。
高松市内へ遊びに行きますと、高級なところで三越の食堂。日の丸を立てたお子様ランチ、これが最高でした。ただし年一回。
いつもは市内のあちこちにある食堂で、"かやくうどん"を食べていました。ちょっと上のランクで"キツネうどん"。(大阪の人は"ケツネうどん"と発音します。)
一般には、"いなりずし"と"かけうどん"が定番でした。
"かやくうどん"とは、薬味であります"ネギ"と"カマボコ"が二切れ入ったうどんのことです。三切れは身切れ(ミキレ)につながり、武士が切腹するときに出す数です。また二切れは鍋物の蓋を取ることに通じ、日本料理の場合、普通は二枚。
この当時、高松市内の食堂(うどん屋)では醤油を掛けて食べさせる店は、ただの一軒もありませんでした。この食べ方は、あくまで物資の無かった戦後の短い一時期だけでした。家庭ではスープを作ってくれる余裕がありませんでしたから、醤油を掛けて食べさせられていたのです。(小話その十四参照)
私にとっては、あまりいい思い出ではありません。戦後(太平洋戦争後)の貧しい時期です。御飯に味噌汁を掛けて食べることもあり、このメシのことを「ぶっかけメシ」と呼んでいました。あまり色気がありませんが・・・・。
うどんのメニューに"かけ"はあっても、"ぶっかけうどん"はありませんでした。
その後、中学生の頃になりますと、市内で"うどん"の有名店が数軒現れ始めます。
この話は次のページでいたします。
"かけうどん"は、だし汁を上から掛けることから略して"かけ"と言うのです。(幕末の随筆「守貞漫稿」より)