うどん小話 その百五十九 なぜ噛むの?
讃岐では昔から、うどんは噛むもの・・・・!!や、噛まないで"のど越し"を楽しむもの・・・・!!、と言った両方の意見(両方のファン)があります。私の意見は小話二十四で書きましたが、今日はこの問題を医学的に解明してみようと思います。
噛むことの本来の目的は固形物の粉砕、いわゆる咀しゃくにあります。前歯で固形物を咬み取り、上下の臼歯ですりつぶし、飲み込みやすい大きさにするという物理的作用です。消化・吸収のための補助的手段とも言えます。ただし、単に細かくするだけでは飲み込むことができません。食塊(しょっかい)を形成する必要があり、そのためには唾液が必須の働きを演じるのです。
唾液の99%は水分であり、口の中に食物が入ってきて、噛むことによって口の粘膜が刺激され、反射的に分泌量が増えます。唾液の中にはムチンという物質が入っていて粘り気を与えるため、噛んでいるうちに食物は唾液と混じり合って食塊が形成されます。そしてのどの奥をするっと滑って飲み込むことができるのです。食物のイオンや分子は、唾液中の水分に溶け込んで味細胞を刺激し、味覚を生じさせ、唾液分泌をさらに促進させます。
このように唾液の役割を考えれば、噛むことにより唾液中に遊出した化学物質の味覚効果でおいしさが発現し、おいしいからまた噛む・・・・、というように良い循環を繰り返すのです。
私はうどん・ソバ・ラーメン等全ての麺が大好きです。旅行に出ますと必ずその土地の麺を食べるのですが、その時は噛むことにしています。そしてスープ(だし汁)をしっかり舌に覚え込ませます。
そこで、次ページは舌の科学について書いてみます。